before kiss, after kiss[短篇]

だから今までのらりくらりと話題を交わしてきたのに。


よりによって休日にこいつに捕まるとは。


さっき、あの場所にいた私を咎めたい。



「いたっ」


余程むすっとしていたのか、押見が急に私の額を突いてくる。


真正面を向いていた私の額をあえて突くとはいい度胸だ。


目の端にだけ納めていたその姿を中央で睨みつけてやる。



「かいちょーって学校じゃデキる女っぽいのに、案外色んなことやってそーだよねー」



だけど目が合った瞬間、すぐさま口を開かれた。


馬鹿にしてるような言葉で驚くほどあっけらかんとした態度。


思わず毒気が抜かれそうになる。



「人は見かけで判断したらいけないって教えてもらわなかった?」

「んー? 別に嫌じゃないしいいと思うよー。全く想像がつかないだけに逆に萌える」



肩肘ついた状態でのほほんと喋る押見。


顔なんてまともに見たことなかったけれど、左眉の上のあたりに傷跡が残っているのが見えた。



「あ、俺の眉見てるー。あれでしょ、この傷。なんだと思うー?」


そこまで凝視したつもりはなかったものの、あっさり押見に見抜かれてしまった。


驚きを隠しつつあてずっぽうで「喧嘩の傷」とだけ答える。


だけど彼は口角を上げて「はずれー」と言っただけ。



結局なんの傷なのかは教えてくれない、いやそこまで興味無いからいいけれど。