before kiss, after kiss[短篇]

小さな店内に、ふたり分の音が響く。


五分と立たず押見はスープまで飲みほしていた。


対して私はまだ少し麺が残っている。


また面倒な話でもし出すのかと思いきや黙ったままこちらをのんびり眺めているだけだった。



さすがにスープ全部までは平らげられなかったけれど、大満足で手を合わせ箸を置く。


食べながら途中目に入った手書きのメニュー表には『ネギチャーシュー 八百円』と書いてあった。


これでその値段ならなんて良心的なんだ。



私が水を口にしたのを見計らったかのように、押見はにこーっと笑って。

「あとはもうベッドを目指すだけだよねー」

と言った。



吹き出すとでも思ったのか? 甘い。


何事もなく水を飲み終えた私を見て、押見は眉をひそめながら「残念」と呟いた。


「残念」も何も、この食えない男がどこまで本気なのか、いや端から本気だなんて思っちゃいない。



入学早々に謹慎処分、当初から金髪にピアスだらけの耳、着崩された制服。


遅刻早退の常習犯、授業をサボって屋上で昼寝。


飲酒喫煙は勿論、女をモノのように扱うともっぱらの噂。


休日明けにはどこかしら怪我をしている手の早さ。



生徒会長という面倒な役職故に嫌でも耳に入ってくる。


あまつ教師からどうにかならないものかと相談すらされる。


なんで私が面倒見なきゃいけないのだ、問題児の後輩など。