before kiss, after kiss[短篇]

手際よく目の前に置かれたラーメン。


どんぶりからはみ出るぐらいチャーシューが乗せられ、中央には山盛りの白髪ネギ。


湯気が顔に当たり、とんこつの匂いが鼻腔をくすぐる。



「いただきまーす、ほら、かいちょーも」

「……いただきます」


出されたものはきちんと食べきる、そう昔から教育されてきた為か、この期に及んで食べたくないとは言えなかった。


押見が出した割り箸を受け取り、割ってレンゲと共にどんぶりへと運ぶ。



「……おいし」


濃厚なのに臭く無く、まったりとしたスープが食欲を一気に加速させる。


中太麺もチャーシューも、最近食べたラーメンの中では一番になれるぐらい美味しいと思った。



「でしょー」


私のひとくち目をまってから食べ出していた押見がまるで自分が褒められたかのように笑う。



気づけば店主は店の奥で紫煙を燻らせていた。



「昔俺が近所で喧嘩売られて負けたときにね、たいしょーが『おう、坊主ラーメンでも食ってけ』って……」

「そんなベタな」

「あ、ツッコミはやいー。ネタの盛り上がりはもうちょっと後半なのに」


まさかとは思ったがやはりネタだったらしい。


押見は口を尖らせてから「伸びるからさっさと食べよー」と私に言い、ラーメンをすすり出した。