before kiss, after kiss[短篇]

案外こいつならこのままラブホにでも向かいそうだな、と思っていたら馴染みのある大通りへと出てきた。


この道を真っ直ぐ行けば、紅葉で有名な公園に出る。


 
「かいちょーはさ、笑った方が可愛いよ?」



不意に口を開いたと思えば、ただの無駄口。


「大きなお世話よ」と答えれば「ま、そーゆー冷たいところもいーんだけどねー」という声。



いいも何も、私は押見と接したことがない筈だ。


何を根拠にそう言えるのか。



割と多くの人が行き交う道を真っ直ぐ進む。


時折押見が何か言ってくるが、どれも同じ調子の勝手な言い分で私は適当に受け流していた。



やがて辿り着いた公園。



「やっぱりまだ紅葉には早いねー」



夕闇に染まりつつある世界の中、鬱蒼と茂る紅葉の葉は、まだ青々としていた。


故に紅葉狩りの客もまだいない。



寧ろこんなところに立ち止まっているのが私たちぐらいしかいなかった。



歩いてきたからそれなりに身体は温まっていた。


なのに押見は手を解放してくれない。


それどころか、ぴったり私の右側にくっついて立っている。