before kiss, after kiss[短篇]

ただ無言の私に押見は「ちぇっ」とつまらなさそうな舌打ちをし。

「ノリわるーい」

とまたあの間延びした声で溜め息をつく。


手は離されないまま。


じいっと切れ長の瞳が私を見つめてきていた。



「じゃあキスしていい?」



けどとことん、その口は軽いらしい。


どういう流れでそこに行きつくのかがわからない。


それ以前に何故私はここまでつきまとわれなければいけないのかがわからない。



「断るに決まってるでしょ」



溜め息混じりにそう答えると、押見はあははと声に出して笑う。



「いいじゃん、さっきだって初めてってわけじゃないでしょ」



何がいいじゃんなのか、謎。


さっきだってしていいと言った覚えはない。



「まーきっとセックスだって経験済みなんだろーし。だったら一回ぐらい、しようよ」



冗談なのか、本気なのか。


その笑顔からは判断できないところが恐ろしい。



「何勝手に決め付けてるのよ」

「えー、だってなんてーの? 処女にはない色気があるよねー」


間違っちゃいないが、答える義理はない。


第一当たってるとしても、だからといってコイツとセックスしようと思うほど、私も飢えているわけじゃない。