「慌ててどうした?」


「大変です!!ネット西日(にしにち)スポーツ新聞で、うちのモデルのヒナと大リーグに移籍する琢己の電撃結婚が載っちゃってます!!」


情報早っ!!


まだ、正式発表できる段階じゃないはず…。



ヒナの友達関係か?


琢己の関係者か?



「どうせニシニチのいつものガセでしょ?って書きこみしておけば?
あそこはガセで有名だから。誰も信じないよ。
で、急いでヒナのマネージャーの黒崎に連絡して社長に報告。もう、2年もやってるんだから分かるでしょ?」


ビシッと指差した。


「はい。でも、やっぱり大きい本当の話のスクープになるとパニくっちゃって。やっぱり先輩は頼りになります。」


ニッコリ笑うと、クルリと振り返って走って戻って行った。


佐井ってば…


相変わらず、パタパタと可愛く廊下を走るな…。


「相変わらず後輩に好かれてるな。」


ん?


背後から聞こえる、その棒読みかのような喋り方は…


ゆっくりと振り向いた。


「やっぱり黒崎か。」



「会社で黒崎はないだろ?」


笑顔なのに、口調は冗談交じりにスネている。


「ごめん。なんかいつもの癖でね。今までそう呼んでたから、しっくりくるって言うか?」


「まぁ、いいや。で、ヒナがどうしたって?」


「ああ、西日にスッパ抜かれたらしいよ。」