「もしかして、エッチだけはいいとか?」


「何それ?」


笑顔で話してるけど、あたしを見る視線は怒りに満ちてるのバレバレ。


「ほら、こういう地味な人ほど、裏じゃ何やってるか分かんないでしょ?」


「それもそうよね。そうじゃなきゃ、黒崎さん程の男がこんな地味な子と結婚なんてね。」


次々に女の子から嫌味が飛んでくる。


あたしは見たままだし。


アンタ達芸能人の方が、裏表激しすぎですから。


フツフツと怒りが込み上げてくる。


「そうなんだ?それじゃぁ黒崎さん居なくて淋しいから、オレにかまって欲しいわけね。」


カッチ~ン…


完全に頭にきた。


「冗談じゃないわよ!!あたしは好きな人としかしません!こっちから願い下げです。それに、アンタに連絡したのは藤原さんに言われたからですから。勘違いしないで!!!」


ダァーっと一気に喋った。


呼吸が乱れてるし。


「こんな地味な人にも、選ぶ権利なんてあったんだ。」


七瀬左隣の女ぁ~。


そこまで言うか?


どうせ、七瀬のご機嫌取りたいんでしょ!?


「じゃあ、せっかくだから歌え。」


ニヤッと七瀬の口元が笑った。


その一瞬をあたしは見逃さなかった。


「絶対にイヤ!!!」


誰がこんなプロ集団の中で歌えるか!!


ここで歌わせて恥じかかせたいんでしょ。


自分の事を否定されたから。


「そうだな。黒崎さんの奥さんなんだから、なんか秀(ひい)でてるモノがあるんだろ?」


KEITAまで…。


さっきの報復ですか!?


「早くしろよ。」


スッと目の前に、七瀬がマイクを突きつけた。


なんかこのまま何もせずに帰るのも、コイツ等に負けたみたいでイヤだし。