「何やってるの?」


びっくりしちゃって。


思ってもない展開だから。


「もう十分すぎる程、幸せだった。今度は、伊吹が幸せになる番だ。」


黒崎の優しい声と笑顔に涙が出てきた。


「そんなのヤダ。みんなで幸せになろう?」


「それが一番だけどな。でも、それができないから今があるんだろ?」


「そうだけど。」


「今度は、伊吹の幸せが見たい。マキも同じ事を言ってた。」


「なにそれ?」


「泣くなよ。」


隣に座って、ギュッと抱きしめてくれた。


「だって…だって。」


「3年も我慢してくれたんだ。もう、幸せになってくれ。」


自分が苦しくなる。


恋愛って、こんなにも苦しかった?


誰かを不幸にしてまで、勝ち取らなきゃいけないなんて。


こんな恋愛なんか、望んでないのに。


それでも七瀬への気持ちが捨てきれない。


恋って怖いものだった。


甘いお菓子だと思ってたのに、食べたら苦しくなる劇薬だった。


麻酔のように全部が麻痺して。


麻薬のようにもっともっと欲しくなって。


依存してるみたい。


これが恋愛ってものなら、あたしの答えはひとつだけ。