「いや!いや!いや!誰がいつ来るかなんて分かんないし。」


七瀬を押しのけたいはずなのに、体に触れただけで心臓がバクバクしてる。


やられちゃいそうな不安感なの?


「そのスリルがいいんでしょ?」


甘い囁きに、急激に体が熱を発した。


「絶対無理!!」


自分に言い聞かせてるみたい。


ガタンッ


机の上に倒れると、首筋に痛みが走った。


「ん…あぁぁ!!」


激痛とかじゃなくて、甘味な痛みに声が出てしまった。


「いい声出すじゃん…。」


小さくつぶやいた声は、耳に近すぎてハッキリと聞こえた。


その言葉を言われたのが恥ずかしくて、蒸発しそうなくらい体中が熱くて仕方ない。


「ダメだってば!!」


力なんか入らない。


それでも、七瀬の体を押しのけようとしてる。


「何がダメなの?」


この状況で、そんな優しく聞かないで。


「これ以上、何もしないで。」


精一杯の答え。


パッとあたしを解放した。


「今日は、これで許しておくか。」


そう言いながら、首を指した。


「えっ?!」


慌てて首元を触った。


微妙にポッコリと膨らんでる。


まさか…


急いで机の引き出しから鏡を出すと、首を確認した。


やっぱり。


キスマークなんか付いてるし。


「どうせ、黒崎さんと何もないんだし。今日の記念。」


それだけ言うと、帰って行った。


今日の記念だ?!


冗談じゃないんですけど!!


かろうじて、ブラウスのボタンをきっちりすれば見えないけど。


どうしてくれるわけ?


放心状態で、イスに座り込んだ。