昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜



…言ってからしもたって思た。


けどそれはいったん口から出てもたモンやし、どうにもならへん。


時は春休みの真っ只中。

旅行から帰ってきた次の日の晩、バイトが終わった後のこと。


場所は優子んちで、俺の前にはこんもりご飯が盛られた二つの器が置いてあるテーブルがあって。

そのテーブルの向かいには、まん丸い目ぇした優子がおった。


その顔はなんていうか、まさしくポカーンってかんじで。

例えるなら学校に行ってみたら誰もおらんくて、「え、今日創立記念日やったん!?」ってかんじの顔や。


「………えっと…?」

「………」

「……え?」

「…もっかい言うけど」

「あ、うん」

「やから…好きやねんよ」

「誰が?」

「俺が」

「え…カレーの話?」

「ちゃうわ!!」

「え…じゃあなに?」

「…やから…優子のこと」

「な…なんやて?」

「〜やから俺が優子を好きやゆうとんねんっ!!」


…なんなんこのやりとり、前もあったんちゃうの。

未だに呆然としとる優子の顔を見て決意が緩みそうになる。


なんで一世一代の告白で、ボケたおばあちゃん相手にしとるみたいな気分にならなアカンのや。


しもた、なんて思っても後の祭りやし。


…そもそも告白しよう、なんて思ってたわけやない。


ただ優子から迷惑かけたお礼にご飯でもおごるでって言われて。

そんなら手料理のがええわ〜て冗談でゆうたらアッサリ了承してくれて。

そんで優子んちに通してもらってすぐ、優子がご飯ついで「これくらいでええか〜?」って俺の目の前に器を置いた。

その瞬間、目があった。


ら。



──好きや。


そんなことを、勝手に口走ってた。


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