信じられへんかった。

睨むこともせんと、目の前のかっちゃんを呆然と見つめた。


体の内側が、ワナワナと震える。


「よーそんなこと言えるなぁ…っ、」


滲みかける涙は、悔しくて悔しくてしゃーないから。

悔しいだけやねんから。これっぽっちも、悲しい切ないの涙なんかや、ないねんから。


弱い犬ほどよく吠える。やけど吠えずにはいられんかった。

湧き上がる感情が、そのまま言葉になってまう。


「ホンッマ…最低やな…っ!!」

「…うん、最低や」

「放せや」


壁にくくりつけられたままの手に力を込めて抵抗する。


「〜放せやっ、かっちゃ──!?」



言葉が奪われてたんと、


同時に、体の中の震えてたんが止まった。



「────っ、」



かっちゃんの息が、舌が、熱が。体ん中にねじ込まれる。

何が起きたんかわからへんかった。


…かっちゃんに、キスされとった。


「い…っん、んん──!?」


なになになになになにホンマなに。

殴りたい蹴りたいはり倒したい、けど自由がきかへん。

力が入らへん。


かっちゃんの舌が生き物みたいに口ん中で暴れる。酸素も何もかも奪われる。

久しぶりの感覚。せり上がってくる焦燥感にも似た感覚に、めまいがした。


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