部屋に響いた声。

思いっきり叫んだら、力が抜けてしゃがんでまいそうやった。

体の中身全部無くなったみたいに。


さくらちゃんのことで怒ってたはずやったのに、いつの間にか自分のことにすり替わってる。

ずっとずっとずっと。我慢してったことが、抑えとった気持ちがボコボコ煮だってまう。


…ギシッ、て。


畳の軋む音がした。

足元に差す影。胸が痛い。

立ち上がったかっちゃん。


ウチの真ん前に立ったかっちゃんの顔は、いつもの気の抜けた顔やない。


かっちゃんじゃないみたいで、怖かった。


「な…なによ…!!」


思わず一歩、後ずさりする。そしたらかっちゃんも一歩つめてって。

下がる。つめる。下がる。つめる。

壁際に追いやられたウチは、唇をギュッと噛んでかっちゃんを睨みつけた。


「…ゆう、他に言いたいことは?」

「…………無いわ。最低なかっちゃんには何言うても伝わらんやろからなっ、……痛──っ!?」


手加減なしに手首掴まれた。壁にはりつけられた手の甲。両方とも万歳みたいにしてひねりあげられる。

とっさに自由を奪われてへん足で膝蹴りしようとした。でもできんかった。


かっちゃんの足が、ウチの右足と左足の間に割り入ったから。


「───っ、」

「…最低?」


至近距離で、かっちゃんの低い声が降る。

至近距離で、鼓膜を震わす。


「さくら泣かすなってゆうたよな?…じゃあお前が相手してくれればええやん」

「……は?」

「めっちゃイラついてんねん、今。──ゆうがおさめてや」


.