昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

かっちゃんとウチと、2人っきりになった部屋。

部屋はガランとしとるのに、満員電車みたいな圧力を感じる。空気が重い。


「…あー…もう何やねん、ゆう…」


かっちゃんはだんまりを決め込むのを諦めたらしく、起き上がってウチの方を向いた。


久しぶりに、正面で向き合う。



かっちゃんの短い黒髪は、もうとっくにかわいてた。



「…さくらちゃん、泣いとったで」

「………」

「〜あんなぁ!!自分の彼女やろ!?好きなんやろ!?なにゆうたか知らんけど──」

「あ〜もううっさいなぁ!!」


かっちゃんのおっきい声に遮られた。

言おうとした文句が全部すっ飛ぶ。

口を開けたまま固まるウチに、かっちゃんはそのまま不機嫌そうに言うた。


「…ゆうには関係ないやろ。俺とさくらの問題や」


俺と、さくらの。


彼氏と、彼女の。


そりゃそうやわな。ウチは関係ないわな。



だって、イトコやもん。



イトコ。ただの、イトコやねん。



「…かっちゃんには、わからへんわ…」


声が震えそうになるの、必死にこらえた。

目ぇ合わせられへんかった。かっちゃんの顔みたら、ボロボロってなってまいそうやったから。

悔しい。悔しい悔しいめっちゃ。


…ウチは、なんで。


「かっちゃんは好きやなくても…女やったらええんやもんな」


やばい。止まらへん。


「……なに─、」

「〜っ、イトコのウチにさえ平気で手ぇ出すもんなぁかっちゃんはっ!!」


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