昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

気づかんかった。けど無意識に、手が浴衣の裾を握ってた。

頭ん中か胸ん中か知らんけど、複雑な気持ちがグルグル回る。


…その回ってたモンが、プチって切れるんがわかった。


昔っからそう。幼稚園、小学校、中学校。いじめっ子に制裁を加えるのはウチの役目やった。

かっちゃんが好きとか、もうそんなん関係ない。


『泣かせる奴には跳び蹴りを。』


これ、ウチの座右の銘や。そういう気質やねん。


「…さくらちゃん、ここおって」

「まーちゃん…?」


勢い良く立ち上がる。

不思議そうに見つめるさくらちゃんを残して、部屋へとズンズン進んでいく。


アホアホアホアホかっちゃんのアホ。

なに女の子泣かしてんの。さくらちゃんは付き合っとる彼女やろ?なんで気持ち汲んであげへんの。


引き戸ぶっ飛ばす勢いでスパーン!!て開けたら、かっちゃんと風間が目を見開いて振り返った。

寝転がったままのかっちゃんを睨みつける。


「…かっちゃんちょっと顔貸してか。表出ようや」


若干上がった呼吸を一回、二回。

かっちゃんは心底めんどくさそうな顔をして、またテレビに視線を戻した。


「…嫌やわ。なんで部屋出なアカンの」



プッチーン。



座布団投げたろか。いや、もっと痛いもんがエエか?

ウチの血管が切れたんがわかったんか、風間が間に入ってウチをなだめる。


「…あーうん、ホラ。な?話あるんやったら俺が出てくから部屋で話したらええよ」


空気の読める男風間。

誰かさんは風間の爪のアカでも煎じて飲ませていただけばいい。


風間は自分の座っとった座布団をウチによこすと、扉を抜けていった。


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