昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

うつむき気味に膝を抱え、小さく丸められた体。

めちゃめちゃソッコー見つかったがな。良かったけど。


暗闇ん中でもわかる。

揺れて光るさくらちゃんの瞳。


…泣いてたんや。


とりあえずさくらちゃんを立たせて、旅館の中に戻る。

女湯の温泉を過ぎた人通りの少ないところまで連れて行くと、無造作に置いてあった椅子に二人で座った。

ズッと、さくらちゃんが鼻をすする音。

静まり返った空気に、息を呑むのも怖くなる。


…女には女を、とかゆうたけど。

可愛らしい女の子に目の前で泣かれたら実際どうしてええかわからん。

泣いとるんが男なら「しっかりせぇや!!」てどついたらそれで済むけど。


「ご…ごめん、なっ」


一人アワアワしてたら、さくらちゃんの方から先に口を開いてくれた。


「いや…ううんっ!全然…っ!!あ、えーっと…」

「…まさるくんとな。ケンカしてもてん」


浴衣の膝んトコをぎゅって握りしめて、さくらちゃんが言う。

言葉が出んかった。なんてゆうたらええか、わからんかった。


のどがカラカラに渇く。


「…なんで?とか、聞いてもええ?」


別に寒くも暑くもない。せやけど、浴衣ん中は変に湿ってた。

さくらちゃんは決心したみたいに唇をギュッと結んだあと、ゆっくりと口を開いた。


「…ウチが悪いねん。ウチが…まさるくんのこと、拒んでしもたから」


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