昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

普通に笑い話みたいにするつもりやったのに。

声がちょっと掠れた。渇いてた。


多分、風間は気づいてたと思う。


嫌やな。嫌や。

かっちゃんとさくらちゃんが目の前で仲よーしとんの見るん、結構辛い。

思った以上にこたえとる自分がおる。


…帰りたいなぁ。


「かわいいと思うで」


耳に届いた声。

フって顔上げたら、風間がじっとウチの方見てた。

テスト受けるみたいな真剣な顔で。


「…なにが?」

「だから…優子が」

「ウチが何って?」

「…やから可愛い言うてんて」

「……なにが?」

「優子や!!」


スパーン!て肩にツッコミ飛んできた。軽くやけど。

だって可愛いっていう形容詞に主語がウチって、日本語的におかしいんやもん。あり得へん。

風間は気遣いさんやからなぁ…。


「そんな気ぃ使ってくれんでエエって!」

「…使てないし」

「可愛いゆうんはなぁ、さくらちゃんみたいな女の子に使うモンなんやで?」


諭すようにそう言ったら、風間は髪の毛をくしゃくしゃかき混ぜながらため息をついた。

茶色いフワフワの髪がなんかの鳥の巣みたいになっとる。


「…それは好みによるやろ」

「好み?」

「やからぁ!犬派の人と猫派の人がおるやろ?それと一緒で…!!」

「…ウチ、犬のが好きやで?」


首を傾げてそうゆうたら、風間は頭をガックリ垂らしてうなだれた。


「もうええわ…」


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