ウチの心境なんかお構いなし、かっちゃんはフンフン鼻歌を歌いながら勝手にテレビのチャンネルをいじってる。

いっぺんこのマイペース男の頭をかち割って中身を見てみたい。

んで代わりに缶詰めのサバの味噌煮詰め込んだんねん。

協力者絶賛募集中や。


「〜はがっ!?」


そんなん考えてぼーっとしとったら、開いたままの口に何かを突っ込まれた。


「な…に…っ!?」

「チョコレート。うまい?」


てろん、と口の中に甘い味が広がる。少しお酒が混じった、高級な味がした。

コンビニとかの間に合わせのチョコやない味。



かっちゃんは昔っからよーモテる。


ウチからしてみたらさっぱり理由がわからへんけど、ひとつ理由を挙げるとしたらやっぱり、この無駄に整った顔なんかもしらん。



かっちゃんこと王沢 勝は、ウチのいとこや。


しかも二世帯住宅みたいな家やったもんやから、生まれた時からずーっと一緒。

幼稚園小学校中学校高校、その上まさか大学まで一緒になるとは思わなんだけど。

しかも住んどる下宿先のアパートも一緒。

203号室がウチ、303号室がかっちゃん。

何もできへん男の一人暮らしを心配したおばちゃん…かっちゃんのお母さんの計らいや。

優子ちゃんが一緒やったら大丈夫やろって。


…こんなの腐れ縁どころやない。腐りきっとる。


かっちゃんの背がウチを差し置いて急にのびはじめたのは中学一年の時。

それは、かっちゃんの人生のモテ期の到来を意味しとった。

人には人生で三回モテ期があるとか言うけど、あれはウソやと思う。だってウチにはまだ一回も来てへん。ハッハー!笑とけ笑とけ。


かっちゃんはすくすくと成長し、今では頭一つ分以上の身長差が出来てしまった。

ウチだって女の中では、かなり高身長なはずやのに。(それが悩みでもあるんやけど)

かっちゃんのモテ期は未だ衰えることなく続いとる。

女の子はみんなこの見た目に騙されんねん。

中身はアホとエロしかないのに。ウチの方がよっぽど愛も夢も勇気も詰まっとるのに。寄ってくる男の影すらない。



かっちゃんはずるい。