昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

かっちゃんが持ってったんは、アクションものでもホラーでも、ましてやラブストーリーでもない。


可愛らしいアニメの、DVDやった。


「なんなん、これ…」

「クマ吉ゆうねんけどな、コイツ!!このシリーズめっちゃ泣けるねんて!クマ吉がな──」

「あーハイハイ」


…なんやねんクマ吉って。そんな男臭いナリして「クマ吉」て。


一人盛り上がっとるかっちゃんはスルー。

台所でとりあえずお湯を沸かす。


まるで自分ちみたいに振る舞うかっちゃん。どこに何があるかよーわかってるらしい。


うちがマグカップを2つ持って戻ってきた頃には、DVDはとっくにセットされてて。

かっちゃんはコタツの特等席に、ちゃっかり腰を落ち着けとった。


「そこウチの場所やってかっちゃん!クッションお気に入りなんやから潰さんといてか」

「ちょ、座れって!!始まるやろ」


画面に釘付けのまま、ポンポンと自分のすぐ隣を叩く。

ウチが文句言うても、ガン無視しやがるかっちゃん。


仕方なく隣に腰を下ろして、足だけコタツに突っ込む。

すっぽりコタツに入ろうもんなら、ぎゅうぎゅうになって狭いんや。かっちゃんがデカいせいで。


冷え切ったつま先に熱が加わって、じぃんとしみるような心地よさが広がった。


マグカップに口をつけながら、チラッとかっちゃんを見る。


かっちゃんはめちゃめちゃ真剣な顔してテレビに臨んでた。


(そんなに好きか、クマ吉…)


でも確かに。

こうやって真剣な顔してたら、かっちゃんはものすごいカッコいいのかもしらん。

黙ってる時限定やけど。


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