強く抱き締められたとき、壊れるかと思った。
唇に噛みつかれるみたいにキスされたとき、ちぎれるかと思った。
舌が潜り込んで、中身を吸い出される。酸欠でのぼせた世界はぐるぐる回る。
久しぶりのかっちゃんの味がなだれ込んでって、ウチの防御壁はあっという間に壊された。
「………ぅあ、」
足元がふらついて、後ろの階段に腰から崩れ込む。
隙間なく覆い被さる重み。汗を媒介として混じる、指先。熱。奥にあるなにか。
遠くの方で祭りの喧騒と、虫の鳴き声がする。
「……ゆう」
「っ……かっちゃ、」
「ゆう…っ」
熱に浮かされた、うわごとみたいに繰り返される名前。
呼ばれるたびに、呼吸ができんくなってく。
ずっと俺のもんでおれやって。ウチはモノなんかやないし、かっちゃんの所有物になる気はない。
けどな、頭ん中ではそう思っとるだけで。
心も体も、勝手にかっちゃんのもんになりたがってんねん。止められへんねん。
かっちゃんの手がもぐりこむ。
直に、背中に触れる。
───ああ。
「………っ」
その瞬間、全部を吐き出すみたいに、涙が出た。



