─かっちゃん。
──好きや。
きっとかっちゃんのせいで寿命数年は縮まっとる。
好きやねん。どうしようもないくらい好きやねん。悔しいくらい。
聞いて。言わせて。眉ひそめてくれても、笑いとばしてくれても、ええから。
好きや。好きや。ウチはかっちゃんが、
「かっ─────、」
すれ違ったはずの、向こう側から。後ろに思いっきり、
手を、引かれた。
「────────」
ぐん、と、弓道の弓みたいに体がしなった。
転けそうになりながらもなんとか体勢を立て直す。
分厚い手のひら。
ゴツゴツと骨が飛び出した手の甲。
自分よりも少しだけ冷たい温度。
…ウチの手をつかんでるのはかっちゃんやった。
振り向きもせんまま、ウチを見ることもないまま、ウチを連れて走り去る。
「えっ、まさこ───」
友人たちの驚いた声が耳に滑り込んで、人だかりに呑まれる。
ウチはただびっくりして、息もロクにできんまま。つり上げられた魚みたいにつかまれた手に倣うだけ。
ほんの少し冷たいのと、ほんの少し熱いのが混じり合う。
強く握り直された手。
…友人たちが、遠くなる。



