悔しかった。
悔しかった、めちゃめちゃ悔しかった。
「〜好きな訳ちゃうなら中途半端なことすんなや!!」
優子を揺るがせるのはいつだって俺じゃない、目の前のコイツの一挙一動や。
「優子がどんだけ傷ついてきた思て───」
「だっておかしいやん」
思わず声を荒げた。
向こうにおる高校生たちが振り返る。
俺の声を制したまさるくんの声も、大きかった。
「おかしいやんか。好きとか…付き合うとか、彼氏とか彼女とか。なんかちゃうやん」
「………」
「未来とか浮かばん。おれは多分これからも変わらんし、あいかわらずフラフラしとると思うし」
まさるくんの顔は、苦笑にも呆れ顔にも泣き顔にも見える表情で。
発される言葉は突き放すもんやのに。まさるくんの声はなにかを探して、だれかを呼んどる。
「アイツとおってもドキドキとか一切せぇへんねん。可愛いともちっとも思わん」
「………」
「昔っから知っとるねん。昔から、ちっこい頃からずっと……」
…そんなん、なんの言い訳にもならへん。
「すきやない。すきやないねん。でも……でも嫌やねん。」
…優子を傷つけていい言い訳には、ならへんはずやのに。
まさるくんの声は、だれかを。
「…帰った場所に、ゆうがおらんと嫌や」



