風間の肩元に、口がぶつかる。
驚いて見開いた視界の半分は風間で埋められて。
「…ごめん、は、俺の方や」
風間の小さな呟きは、喧騒の中に溶けて消えてく。
どういう意味。
風間が謝らなアカンことなんか、いっこもないのに。
通る人がみんな、チラチラこっちに視線を送るのがわかった。
でもウチは驚いたまんまで、ただ必死に立ってるだけで。
「か…かざ、」
「…もっかい、やり直しな」
ぎゅーっと体を締め付ける。
包み込まれる。大事なモンやって、体に伝えられる。
この感覚、どこかで。
──やり直しな。
あの日。かっちゃんと別れて、ひとりぼっちの遊園地の帰り。
偶然風間と出会った。コンビニ。
お土産を持ってきてくれた。少し寄ってく?って言うた。コーヒー飲んだらすぐ帰るからな!?って風間が言うた。ウチは笑った。
並んで歩く。横断歩道。
かっちゃんのことでいっぱいで、脳ミソはどっかに飛んでた。信号は赤。
鳴り響くクラクション。
"な…にしてんねん!?信号赤やで!?"
風間に抱き締められて、守られて、安心して、ゆるんで、こぼれて、溢れた。
──ウチは。
"忘れんでええから"
"代わりでええから"
"おれと、付き合って"



