昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


「…………っ」


風間が優しいから、ふがいない自分に泣きそうになる。

大切にするなんて言葉だけ立派で。大切にされてばっかの自分。そんな価値あらへんのに。

引いたばっかの涙が、また防波堤を越えそうになる。


手を引かれるがまま、人をよけて道の端に移動して。もたれかかったガードレールは、しっかりとウチの腰を支えてくれた。


「…っていうかその前につっこまなアカンのはソコやないな。下駄かたっぽどこやってん!」


ちょっと笑いながら、ホラしゃーないなぁって。

財布ん中から絆創膏を取り出して、ウチの指に巻いてくれる。


「絆創膏…」

「え?ああ、コレな。いっつもは入れとるわけやないねんけど…」

「…ほななんで?」

「……や、祭りて人多いしな。結構歩くし…もしかして優子サンダルやったら、靴擦れしたあかんなぁ思て」

「…………」

「あ〜…うん。まさか浴衣と下駄で来てくれるとは思わなんだけどな!」





そう言って笑って、




ほら、





風間はいつだって、ウチのことをわかってて。