澄みきった深夜の黒い空に、星の際立った光。

振り返ったらアパートが見えるか見えんかくらいになった、その曲がり角。




「───────」




思わず息を呑んで、その場に立ち尽くした。


…棚からボタモチ、みたいなエエ偶然なんかめったにあらへんねん。

偶然は、別の意味でいきなりやってくる。


ゲーム。RPGで、街歩いとったらいきなりボスに遭遇したねんけど、みたいな。

防御も攻撃も準備いっさい皆無。

なんだってこんな時間に面白いくらいバッタリ遭遇してんの。


こっちは一人、向こうも一人。

向こうも向こうで、びっくりして目ぇ見開いてて。


しばらくお互い黙ったままやった。

でも向こうが目を伏せて、俺とすれ違おうと歩みを進めたそん時。



「──まさるくん」



…その腕を思わずつかんでた。


半袖からむき出しになった二の腕。まさるくんの瞳が俺をとらえる。


優子に連絡とらんかったこの数日間、俺は逃げとったんかもしれん。

でも優子は向き合ってくれたから。俺を真っ直ぐ見てくれたから。


落ち込むんは今やない。
諦めんのはまだ早い。




…だってまだ、正々堂々と向かい合ったわけやない。




「…話、したいんやけど」