**




「………っ、」



ふらついた足取りでなんとか自分の部屋までたどり着くと、玄関に崩れ込んだ。


投げ出された足。

込み上げてくるのは空気が肺に入ってくる痛みと、ただただ赤黒い、なんて形容すればええんかわからん感情だけで。


気持ち悪くて、でもどう吐き出せばええかわからんで、のどの奥が焼けそうに熱い。


腕を持ち上げようとしたのに、全然力が入らへん。




「…はっ……」




…ああ、俺は、なんで。



皮膚の奥でずっと煮えたぎってる血液。

手首を噛みちぎりたいほどの強い衝動に襲われる。



…なんで。とか、そんなん。


自分でもわからん。わからんわ。

最低やな。
ニンゲンとして終わっとるな。それはわかっとる。


…けど、耐えれんかった。


起きたら、ゆうがおらんくて。

名前を呼んでも返事なくて。

ゆうはその頃、他の男と一緒におって。



…無くなってく。


俺しか見たことなかった顔。

温度。俺だけのモンやった。そういうもの。


なくなってまう。

どんどんなくなっていってまうねん。そう思ったら。