昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


名前を呼んだ瞬間、深いキスが降ってきた。

唇が震える。久しぶりにかっちゃんを受け入れたら、体ぜんぶが泣いてる気がした。


──好きっていう感情がこういうことなら、好きは濁流や。

濁って、全部見えんくして、全部流される。勢いに飲まれてまう。


キスされたら、温度とか、感触とか、かっちゃんが流れこんでって、ぜんぶ流れこんで、




──ウチは。




「……ゆう」



指先が、かっちゃんの肩甲骨にふれた。


アホかな。アホやわ、だって。



…世界がこのまま終わってもてもええような、気がしてん。



「………はっ」


息継ぎをした瞬間、ぼやけた視界とあやふやな聴覚が、一瞬クリアになる。

…そこに響いたのは、バイクのエンジン音。

聞き覚えがあった。つい先ほどまで、ウチの下で響いてたその振動。


アパートの下で止まったそれは、カンカンと階段を昇る、足音に変わって。



──かざ、ま。



一気に現実に引き戻される。

近づく、足音。頭が水ぶっかけられたみたいに一気に冷えてく。


「かざ……、〜っ!?」