昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


ゴスって鈍い音がして。

みぞおちにかっちゃんの拳が入った。


…一瞬意識が遠くなる。


Tシャツがはぎとられて、中途半端に腕にひっかかったそれは、まるで縄のようにウチの手首を拘束して。


かっちゃんの目に、無防備極まりない自分の姿がうつる。


「別にええやんけ。減るもんやないし。…どーせイトコなんやし」

「げほっ……」

「イトコ同士はめっちゃ相性ええねんて。聞いたことあるやろ?」

「…っ……なんで、ウチなん……」

「フツーのん飽きたねんて。相手してや」


かみつかれるようなキスが降ってきた。

降ってきたっていうより、落下。すごい勢いで隕石みたいに、ウチのど真ん中をへこましていく。

…頭ん中、真っ白っていうより真っ黒やった。

胸のしめつけがゆるんで、ホックが外されたんやってわかった。やのに、胸も頭も苦しくて、息ができんくて。


…痛い。


視界がぼやけて、かっちゃんの顔が見えへん。

痛い。

風間は優しいし、腹殴ったりせえへんし、無理やり人の上に乗っかったりせぇへんねん。


…そう思ったら、ボロッボロ涙が出てきた。


「…ゆう」

「ふ……、は……っ」


悔しい、悔しい、悔しい。こんな奴のために泣きたくなんかないのに。