昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


腕に触れる風間の髪が、柔らかくて。

風間はいっつも柔らかくて。あったかくて。いっこもウチを傷つけたりせんねん。

いっぱい、多分な。ウチはいっぱい、風間を傷つけとるのに。



「風間……っ」



唇に落ちた水滴は、しょっぱかった。

入り交じった汗。でも涙の味かもしらんって、ぐちゃぐちゃになった頭ん中で思った。


なんで、なんで。なんで。


なんでウチは、風間のほしい言葉を言ってあげられへんの。

だってほんまにすきやで?風間がすきやで。好き。

好き、すき、すき、


ウチの口がどんなに言葉を発しても、目の前のひとには届かへん。


風間がほしいのは言葉やない。そんなの、痛いほどわかってた。

風間は、ぜんぶわかってまうから。ウチのこと、全部わかってくれるから。




「風間………っ、」




"アホやなぁ、優子"


風間。


"まだ忘れられんでええから"


風間。


"好きってそんな簡単に消えるもんやないやん"


風間。


"やから、しゃーないよ。"


風間。


"好きや、優子"



…風間。












"ゆう"










"行かんといて"