昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


「あー…、かっちゃんって優子のイトコの王沢くんやろ?」

「…知っとるん?」

「優子から一回聞いたことあるよ。っつーかめっちゃ目立っとるやん?女の子絶えへん〜てウワサ聞いたで」


やるなぁ、みたいにニヤリと笑う風間。

…広い大学内でもそんなウワサあるんか。口をつぐんで黙り込む。

風間は不思議そうに体を起こすと、ウチの顔を覗き込んだ。


「どした?…なんかあったん?」

「……別に」

「わかった!!王沢くんのファンに嫌がらせされたとかやろ!?」

「…もしそんなんされたら拳で倍返ししたるわ」


グーで拳を作ってみせたら、風間はぶはっと吹き出して笑った。


「せやなぁ!優子がいじめられる図とか想像できへんもん」

「…悪かったなぁ!!ちっとも女の子じゃなくて!!」

「ふははっ!…いや、」


風間はウチの頭にポンって一回手を置いて、


「優子は女の子やろ。」


そう言うてニッて笑った。


…風間は、ホンマええヤツや。普段はおちゃらけとるように見えるけど、実はめっちゃ友達思いやし、気ィもきく。

かっちゃんもちょっとは見習えばええのに。


…あのアホ、ウチがアパートに帰ってへんことにすら気づいてないんやないやろか。

ウチはめっちゃ怒ってんねん。帰らへんのはめっちゃ怒ってるからで、そんでもうひとつ、アパートに帰りたない、理由は。



結局風間は寝んと最後まで起きてくれとって、一緒に声ガラガラんなるまで歌ってくれて。

思いっきりロックやらパンクやら歌ったら、だいぶスッキリしたウチは、


まだ薄暗い明け方。


やっと自分のアパートに、帰ることにしてん。