それから3日間くらい、友達んちを転々と泊まり歩いた。
もう冬休みやったし。
授業の道具とかいらんかったから、アパートに帰る必要もなかった。
そして4日目の晩、風間がカラオケオールに付き合ってくれることになった。
思えばこん時から風間とは結構仲良かってんな。
「うぁ〜、もう俺声出えへんがな」
「何言うとんねん風間!!もっかいあれ歌うで、あの叫ぶやつ!!」
「むーりー、無理です優子さんー」
カラオケ部屋のソファーに倒れ込むと、死んだみたいに手足を垂らす風間。
肩揺すっても起きる気皆無や。
「かざま〜ぁ!!」
「眠い眠い眠いんやって」
「今寝たら死ぬで!!」
「ここは雪山か」
風間はフッて笑って、うつ伏せやった体を仰向けにした。
ふわふわした前髪が、風間の目をかたっぽ隠す。
「…優子が膝枕してくれたら起きといたってもええよ?」
「かっちゃんみたいなこと言わんといてか」
今一番思い出したくもない人物が浮かんで、言葉がトゲトゲしくなってもた。
…ほんまに。
ほんまにほんまに、ほんまにムカつく。
アパートに帰らへんのは、めちゃめちゃ怒ってるからで、偶然かっちゃんに会おうモンなら多分殴り飛ばしてまうと思うから。
でもウチがこんな悩んでても、当事者のかっちゃんはなんも思てへんのやろな。
きっと、「え?そんなんしたっけ?」とか言い出すねん。アホみたいな顔で。ムカつく、考えただけではらわた煮えくり返ってったわ。



