昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜




─手を繋いで、海岸沿いを歩く。


もうだいぶ、この右手の位置にも慣れてきた。

最初は恥ずかしいてキョロキョロしとったけどな。旅の恥はかきすてっていうやんか。


「気持ちええなぁ」

「なー」

「夏の夕方とか、夜とか。歩くんめっちゃ好きやねんけど」

「あ、わかるわそれ」


顔にあたる風が、ちょうどええ温度でほんま気持ちいい。

かすかな潮の香り。
胸焼けせん程度にかすかな。懐かしい気持ちになるんはなんでやろ。


ふと隣を見上げて思う。

…風間の髪の毛、やっぱりウチのより柔らかいみたいや。

潮風にほわほわ、気持ち良さそうに泳いどる。


夜の空気。温度も、風も。

そうやって夏の、暑さが消えかけた空気の中でボーッと歩いてたら。


なんでやろか。


…ふと、かっちゃんの顔を思い出してしもた。


最後に見たのは、病室に横たわる熱を帯びた顔。

かっちゃん、もう大丈夫なったかいな。

休めばすぐ元に戻るって先生ゆうてたけど。
点滴もしとったし、栄養あるもんも差し入れしといたし。