寝ぼけた頭で思い出されるのは、新幹線の中やなくて薄暗い、無機質な壁。
病院の風景。
"ゆう、行かんといて"
…あれから。どーやって帰ったか、とか、それすらもよくわからへんねんけど。
明け方、とりあえず病院から家に帰って。そしたら風間がすぐ、迎えに来てくれて。
そのままロクに睡眠もとらんと、豪速球みたいな新幹線の中で数時間。
…絶対、寝れるわけないと思って。
たしかに睡眠ほぼゼロやしバイトで疲れてるし、やけど。
頭の中で、熱に浮かされたような声がループする。行かんといて。行かんといて。ここに、おって。
そんなんさぁ。絶対、フツーに寝れるわけないやんか。
…とか思ってたのに、寝てたんはだれや。
「ウチや……」
「ん?」
「いや、なんでもないです…」
それもウトウトとかやない、爆睡や。
風間にもたれかかるどころか、雪崩みたいに倒れこんどったがな。ほんまごめん、風間。
ほっぺた押し潰しすぎてジンジンしとるわ。



