「ん、これ。」
机に伏せていた頭に、なんかをかぶせられる。
ムクッと起き上がってみたら、近くに風間の顔があった。
頭の丸みに沿うようにすべり落ちたのは、一冊のノート。
「さっきの授業のやつ。まるごと寝てたやろ?優子」
「え……あ、あー…。あんがと、風間」
寝ぼけて鈍くなった感覚が、やっとゆっくり戻ってくる。
ガヤガヤと騒がしく飛び交う会話に、授業が終わったことを今知った。
…授業が、というより、最後の授業が、や。
明日からは夏休み。
みんなのミュールとかサンダルとかがきらきらして、浮き足立っとるみたいに見える。
「……爆睡しとった…」
「さすがにキツい?バイト」
ウチの頭を包み込むみたいに撫でる、風間の手のひら。
気持ちよくて、もっかい目を閉じる。
「うーん……けど、なぁ。あともうちょいやし」
「あと3日やろ。次の朝バイクで迎えにいこか?」
「んー………でも悪いし……」
「はは、優子が寝坊して乗り遅れたら俺一人旅なってまうやん」
風間は笑って、ウチの髪の毛をくしゃくしゃーってした。



