昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

後ろの方で、ガコガコ、ギシギシ、重そうな作業音が響いてる。


「…仕送りない、てやっぱキツイなぁ。」


うーんて思いっきり背伸びしたかっちゃん。


ネコみたいに、背中がきれいにカーブしとる。


「…あ……うん。な。しかも今からちょうど夏休みやー、ゆう時になぁ。」

「まだ前やっとったバイトもしとるん。」

「あ、うん。夏休み旅行いこーて思ててな、その旅行代も───」



要るし。



そう言おうとして、ちょっと固まった。

普通に口から滑り出た"旅行"の単語。



かっちゃんらと行った、春の旅行。


季節はあっという間に変わって。


いろんなことあって、ほんま、忘れられんくらいいろいろあったはずやのに、振り替えってみればあっという間で。



季節は夏に変わって…風間と行く、旅行の話になっとるんや。



「旅行────……」
「え、っとなー。バイト今週末までして、次の朝から。手取りでお金もらってさぁ、ソッコーチケット代に消えるねんで。なんかむなしいけどしゃーないよなー。うん、そんでな、」



…口が勝手に動いて、無駄にベラベラひとりでしゃべっとった。



なんか、そうやないとあかん気がして。


かっちゃんに、何か聞かれるタイミングを渡さへんかった。