ゆっくり視線をそっちへ戻す。
ウチの目に写るのはデッカイ体を小さく抱え込むかのようにして俯く、かっちゃん。
…なんやかんやゆうても、かっちゃんは彼女をどうでもええて思ってたワケやなくて。
きっと傷つけてしまったことに反省してて。
…アホみたいに酒に頼って、笑ってごまかしてるけど。
ホンマは落ち込んでる。
そんなんわかるし。どんだけ付き合い長いと思てんの。
隣で小さくなって落ち込むかっちゃんに、何だか憎めないものを感じて口元が緩んだ。
「…今回の彼女さぁ、結構好きやったやろ、かっちゃん」
「……まぁ、………うん」
「アホやなぁ、ホンマ。自業自得やっちゅーねん」
なんか、こういう風景、昔とカブる。
かっちゃんがまだ、ウチと同じくらいかそれより小さい背丈やったとき。
かっちゃんはよく無茶なイタズラばっかして、おばちゃんにこれでもかっていうくらいこってり絞られとった。
そのたびに縮こまって、しゅん、て塩かけられたなめくじみたいにしぼんで反省すんねん。
…ゆうてまた何日かしたら同じこと繰り返すんやけど。
ウチはかっちゃんが隅っこの方でいじける度に、そのそばにおった。
何もしゃべらんかったけど、ずっと隣におった。
小さく体操座りをしたまま、ふと視線を上げたかっちゃん。
赤く蒸気した顔に並ぶ瞳が、季節はずれの風鈴みたいにゆらゆら揺れている。
ウチのジャージの袖をつかんで、うわごとのようにウチの名を呼んだ。
「ゆう……」
「…ん?」
「ゆう……」
「………何よ」
「…チューしてええ?」
「…………」
チュー………
…………て。
チュウ!!??
「…なっ!?…なななにを言いよんねんかっちゃ──痛ぁっ!!」



