昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

しかも疑問系ですけどこの人!!


「この前な。先輩ん家に遊びにいってさぁ〜」

「…女の?」

「うん。ちょっと相談したいことあるねんけど〜、て言われて〜」


…いや、行くなよ。


「そしたら、まぁ……」

「…まぁ……何やねん」

「…成り行き?」


ニカッと笑ってかっちゃんは無邪気にそう言った。

そう、それはまるで少年のような笑顔で。


…成り行き、だと?


爽やかな顔しても、下半身は発情期の猿。それはお猿さんに失礼や。

猿以下。存在価値、ミジンコや。


「それがなぁ、泊まる予定やったホテルに偶然その先輩がおってさぁ。なんか修羅場?な雰囲気になってもて…」

「………」

「バレてもたし、いきなりでごまかせへんし…そしたらバチコーン!て、な。……ビンタや」


ははって笑って、ほっぺたを押さえるマネをするかっちゃん。

確かに言われてみれば、左頬が少し赤く腫れている気がする。


…ビンタで済んで良かったわ。

ウチからしてみればグーパンチもんやで、そんなん。


「…最悪やな、お前」

「ハハ、それアイツにも言われたぁ〜」


かっちゃんは楽しそうにまだ赤い頬を緩ませながら、ウチが友達んちから持って帰ってきたビニール袋を探る。

中身は、余ったチューハイや。


「かっちゃん…それ以上飲んだアカンて。」


ウチが止めに入ってもかっちゃんの手は止まることなく、勝手にプルタブを開ける。

グビグビと飲み干して、満足そうに喉を鳴らした。


…もう呆れてため息も出てこない。


「なぁ…」

「ん〜?」

「…あんま、テキトーなこと…すんなや」


小さく落とした自分の声は、二人だけしか居ない静かな部屋に響き渡って。



「…ごめん」



カツン…と机に缶が置かれる音と共に、トーンの下がったかっちゃんの声が隣に聞こえた。


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