─頬と、あと腹に激痛と、左腕に鈍痛。
「痛ってぇ……、」
思いっきし殴られたんと蹴られたんと踏まれたんと…
まぁ、生きて帰ってこれてよかったわ。
あんなドラマみたいなことあるねんなー。実際。
あれやな、そしたら俺めっちゃ悪い男役やん。
…とか言っとらんと、反省しよ。記憶飛ばすまで飲みません。
なんとか足引きずって帰ってきた、アパートがもう見える。
アパートはどの部屋も全部電気消えてて、真っ暗やった。
…そりゃそうやわな。この時間やし。
空き部屋もあるらしいしな。
二階……203号室。
ゆうももう、寝とるんやろな…。
「げほっ、」
ふいに咳き込む。
唾飲み込んだら、鉄みたいな味。
口ん中、血出とるんかな。
ほんま痛い…歯ぁおれたんちゃうか…。
酔いはすっかりぬけて、やけど残ってる気持ち悪さと倦怠感。
ぐわんぐわんする頭に、夜の空気がチクチクとしみる。
…寒い。
体と、なんやろな。ぽっかり中身が空になってもた気分。
ふと、強い衝動に襲われた。
……会いたいなぁ。
ゆうに、会いたい。



