昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


はぁ…と、でっかいため息が出る。

はぁ…どころちゃう。呆れすぎて体中の空気全部抜ける。

酸素不足で死んだらどうしてくれんの。


冷蔵庫から取り出した冷たいミネラルウォーターを、並々とコップについだ。


「…ん、ホラ飲め」

「ひゃっはー!アカンよ〜みせーねんがお酒飲んだらぁ〜!!」


またかっちゃんは阿呆みたいにケラケラ笑いを始める。


…ひゃっはー!て何やねん。てか、コレ水やから。一本105円ていう格安のミネラルウォーターやから。

酒飲んだんは、お前やかっちゃん。


わざわざ入れてやったのに、かっちゃんは一回もそれに口をつけることはなかった。

迷惑な酔っぱらいの頭は一向に冷める気配がない。

しょうがないから、温くなる前にコップについだ水を飲み干した。


「かっちゃん…今日彼女と会っとるんやなかったん」

「え〜…うん。そうやってんけど〜」

「ならなんでココにおんの」

「うん、やからなぁ。…別れてん。さっき」



ふ〜ん……



………て。



ブフ────!!!!!

ほんまにマンガに出てくるんかゆうくらい、噴水みたいに水、吹いた。


「ゆう……きたない─」
「なっ、んで、そうなんねん!!」


付き合いたてで、しかも、クリスマス当日やんか。

恋人たちのメインイベントちゃうの。

間髪入れずにつっかかったら、かっちゃんはちょっと驚いたように目を丸くした。

目ん玉の中まで、赤い。


「…ん〜、9時?いや、10時くらいかなぁ……思いっきし殴られてなぁ」

「なんで!?」


一体何したねん、お前。


「ん〜…浮気………?」
「はあぁ!?」