昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜



………は?


初めて言われたそのセリフに、ふわふわした頭が一瞬正気に戻った。


すき。



……好き?



「別れようって言われたときな。やっぱりなって思ってん」

「………」

「だって勝くん、ウチとおる時ずーっと優しくて。ほんま、ずうっと優しーてな。でも、」


さくらは大きく息を吸い込んで、全部吐き出すみたいに言った。



「…まーちゃんには、全然ちゃうかった。」

「……え」

「まーちゃんとおるときのまさるくんが、多分ホンマもんのまさるくんなんやろな〜って。ウチにはそういうの、見せてくれへんのやろな、て」



…やから、な。



「まーちゃんには、かなわへんって思った」

「………さくら、」

「ここでエエよ!ありがとう」


さくらは小走りで俺より先回りすると、振り返って笑う。

髪の色が、肌が。


月明かりに透けて、いっそう淡く見えた。



「まさるくんと付き合っとるとき、めちゃめちゃ幸せで、めっちゃ楽しくて。でもちょっとな、寂しかったよ!!」



そう言ってはにかんで、さくらは駅の構内に吸い込まれるように消えていった。


その場に取り残された俺は、ただぼうっと、駅の白っぽい明かりを見つめとった。