昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜



もう11時や。

さくらんちは門限があって、それもけっこー厳しかったはず。


さくらは俺の手に自分の手を重ねながら、ふわりと笑った。



「…まさるくん、相変わらず優しいね。」

「……」

「うちなら大丈夫やよ〜!もう帰るとこやし、家にも連絡したから」

「…駅行くん?送ろか」

「ええって!!まさるくん、友達待たせとるんやろ」



少しぶりに会ったさくらは、全然変わらんかった。

相変わらずかわいいし、雰囲気もやわらかい。


「ええよ。送る」

「…でも」

「俺が心配やねんて。夜の街にはいっぱい怖いおにーさんがおるから」

「まさるくんみたいな?」

「お。さくらも言うようんなったな〜」

「ふふ、せやろ〜」



じゃあよろしくお願いします。て言うて、さくらはぺこって頭を下げた。


今日はバイトの送別会で、なかなか抜けだせへんかったらしい。

「おとーさんに怒られるわぁ〜」て苦笑しながら、俺の隣に並ぶさくら。


並んで歩き出したら、さくらのつむじが見下ろせた。


一生懸命見上げながら話すんの、かわいかったなぁ。とか。


…っていうか別れたのに、こんなんすんのおせっかいやったかもしれんよな。

なんかさくらって、守ったらな〜欲みたいなんを掻き立てられるねんなぁ。


…何やっとるんやろ、俺。



「…なぁ、まさるくん」

「ん?」

「まーちゃんと風間くん、付き合いだしたって…聞いた?」