昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

飲み放題の店だけあって、みんなピッチが早い。


「えっ、今王沢くん彼女おらんのー!?」

「じゃ〜あたし彼女立候補〜っ!!」

「ええっ!?待ってやユリちゃん!俺も今彼女おらんしっ!!」


ぎゃはははは。

手を叩いて笑いが飛び交う。


酔いが回って、みんなすっかり打ち解けて饒舌になってきた。


「なぁなぁ、二次会もしよーよ!に・じ・か・いっ!!」

「おっしゃ、カラオケ行くでカラオケ〜!!」

「こいつなぁ、EXILEのバラードとかモテそうなやつばっかり歌うねん」

「うっさいわモテたいんじゃ!!」

「あははっマジうける〜!!」


みんなが笑てる中、一緒に笑いながらも俺はちょっと冷静やった。


だってなぁ。


…隣の女が、ずっと俺の太ももに手ぇ乗っけてんねんけど。


たしか名前なんやっけか。えーと…



「あー、遥香ちゃん!グラス空いとるで、なんか頼む?」


「じゃあ…カルーアミルク。」



幹事のヤツが俺の隣の女に向かって声をかけた。


…ああ、ハルカ、か。



太ももに乗っとる、その薬指をつまんでなぞる。

ハルカはクスッと笑って、何か言いたげな顔で俺を見上げた。