昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

―そんな気はしとったから、そこまでショック受けたりせんかったんやけどな。

―それでもやっぱり大好きやったし。今も好きなままやし。ちょっとひきずるかもしれへんけど。

―でも、今はスッキリしたんがおっきいかも。


紡がれる言葉は確かに空気を震わしてウチの耳に入っとるはずやのに。


「でも…これからもなかよーしてくれたら嬉しいです。まーちゃん」


さくらちゃんがそう言って不安気にウチを見つめるから、ウチは多分その手を握って、もちろんって笑顔で言うた。

言えた気がする。……でも。


頭の中はまるで脳みそがプカプカ海に浮かんでしもたみたいに、ものすごい変な、複雑な気持ちでいっぱいになっとった。



…なんでかっちゃん、さくらちゃんと別れたん?


可愛いってよったやん。大事にしよったやん。めちゃめちゃ女の子扱いしとったやん。

さくらちゃん、めちゃめちゃええ子やんか。


それにかっちゃんのことやから、ちょっと連絡すればすぐに来てくれる女の子とか、泊めてくれる家とか、よーけあるやん。



やのになんで。



なんであの晩、かっちゃんはわざわざウチの部屋に来たん?



一番気楽やったから。

女の子相手やと気ぃ使わなアカンけど、ウチやったら好き勝手できるからとか、きっとどうせそんな理由。

そうやってダラダラしたの続けて、苦しくて、もうやめようって。

風間を好きになろうって。実際好きやし。ほんま、好きやし。



…今さらこんなんで、揺れるとかはおかしいやんか。



貧血気味でもないのに、強い太陽光に頭が一瞬クラっとした。さくらちゃんと別れて一人、日陰を求めてさっきまでの講義室に入る。

ドアを開けると生ぬるい、それでいて食べ物が数種類混じった匂いの空気が鼻先をかすめた。