玄関に立ったまま、向き合う鼻先。
「さっきな…、一緒おったん、別に、約束とかしとったわけやないねん。」
しっかり、風間の目ぇ見てそう言った。
困惑の色が浮かぶ風間の瞳の中に、ウチのTシャツの色も混じって。
「…ちゃんと、ゆうたから」
「…まさ───」
「風間と、つきあっとるって」
かっちゃんに、ちゃんと。
そう言うた瞬間。
「─────っ、」
風間の顔が、くしゃくしゃんなって。
泣きそうって、ほんま、子供みたいな。
「…ごめん、優子」
「かざま、」
「…彼氏なりたてでどんだけ彼氏ヅラやねんって思うけどな、」
「………」
「ごめん……さっきな。めっちゃ、妬いた」
米の袋がドカッて落ちた。
多分結構な量。どんぶり何杯くらいあるんかな。
ウチを閉じ込めんくらいの勢いで、ぎゅーって抱き締める風間。
心臓はめっちゃバクバクしとって、背中に回された腕からも、そのバクバクは伝わってきて。
バクバク、バクバク。
ウチのよりちょっとだけ速い、その鼓動。
いったん緩んだ力。
新しい空気が肺に入る。
おでこに柔らかい髪が、触れて。
「─────」
風間の唇とウチの唇が重なって、キスになった。
軽く触れて、また触れて。
…次はもっと、深くなる。
「ふ……っ、」
頭ん中がごっちゃになって、何を考えればええんかもうわからへん。
ただ必死で、目の前の柔らかい髪をかき混ぜる。
カクン、て足の力が抜けて、そのまま壁にそってズルズルと玄関に座り込んだ。
おでこか、鼻先か、唇か。どっかが触れとる位置で見る風間の顔は、いつもとちょっと違って見えて。
首筋が疼く。
…それはウチに刻まれた、消さなアカンはずの感覚。
「…して」
「───まさ、こ」
「…して、風間…っ」



