昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

ずる、て。

重力に従って、ウチの腕が布団の上に落ちる。

白い布団の上の、自分の手のひらばっかりを見つめとって。


かっちゃんの顔は、見られへんかって。


「…………あ、そうなんや」


…ってかっちゃんが言った。

なんか、今日の夕飯の献立なに?って聞いて、返ってきた返事がそんなに好きなモンじゃなかった時の反応みたいやった。


かっちゃんの好きな食べ物は豚の生姜焼き。の、ちょっと味付けが濃いやつ。


どうでもええけど、ほんまどうでもええねんけど、そんなこと思い出した。喉の奥の方が塩辛くなって。


「……うん…」

「良かったやん。風間くんエエヤツやし」

「……あ、…うん。せやな……」


良かったやん。その言葉が、ずっしりと重くウチの頭にのしかかる。

うん、良かった。良かったんや。ほんまに。ウチは。

自然と肩に力が入ってまう。
手は布団のシーツを握っとって、そこから広がる何本ものシワ。

かっちゃんはゴロンて寝っ転がって、からかうように唇の端で笑った。


「へ〜……。ほな、ゆう初めての彼氏なわけや」

「………そ、れ…は…」

「ははっ、何ぃな?照れとるんけ。…っていうか初めてってなんか響きエロない?」


「……そんなん思うのかっちゃんだけやわ…」


すぐ近くで空気を震わす、低音の笑い声。どんなに女度が低いゆうても、多分ウチからは絶対に出ぇへん声。

かっちゃんは大きく伸びをして、もっかい布団にちゃんと潜り直す。


…なんか、めっちゃ拍子抜けやった。


拍子抜けって。だってかっちゃんめっちゃ普通やし。

別に何かを期待しとったわけやない。そうやないけど、なんか。


なんか。


「…でもアレやな。」

「え?」

「俺もう、迂闊にお前んち行けんのやんな。」