昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

ただ綺麗にかっちゃんに片思いしとったわけやない。

意志やって全然強くない。流されてばっかで。こんなん、風間のこと騙しとるみたいやん…。


ぶら下がっとる電気コードを引っ張ったら、豆球が切れとるんかすぐに真っ暗んなった。

目が慣れへんから、なんもわからへん。

腰下ろして、感触をたよりに布団に足潜らせたときやった。


「…ゆう」


かっちゃんの手が、ウチの手首をぎゅって握って。

ビックリしてそのまま固まってまう。

かっちゃんの声は少し掠れてて、握られた手首は熱を帯びて熱くなる。


「ちょっと前に…行ったけどおらんかった」

「…え…な、に…」

「ゆうの部屋」


だんだん目が慣れてくる。

ウチよりも先に、かっちゃんの目はハッキリと暗闇の中のウチの姿をとらえてた。


「な…ん、なに?何か用やった?」

「…用ないと行ったアカンの」

「アカンこと、ない、けども…」


なんで、ウチの部屋に。

昨日までずっとアパート帰ってきてなかったやん。

さくらちゃんとおったんやないん。そしたらもう、ウチんとこ来る必要ないやんか。


声が上ずる。

なんか。なんか、アカンって思った。空気が。これ以上ここにおったらアカンって。


かっちゃんの、手首を掴む力が強くなる。


「か……っ、」

「え?」

「風間…んちに、おった、から」


思わず、結構大きい声になった。

言わな。ハッキリ言わなって思った。

もう決めてんから。風間が付き合おうってゆうてくれた晩に。


…かっちゃんのことはスッパリやめるって。


「…つ、……付き合う、ことんなってん」


そう言うた瞬間、かっちゃんの手のひらの力がゆるんだ。