かっちゃんの部屋は、たいていカギが開いてる。

不用心やから閉めろってゆうてんのに、いっつも男の子やからだいじょーぶって交わされんねん。

こんな注意ばっかしよったら、ウチがかっちゃんのお母さんみたいや。


「かっちゃん…っ…!!」

「うわぁっ!!」


突如部屋に飛び込んできたウチに、かっちゃんは驚いてベッドから転げ落ちた。



…はだけたワイシャツ姿でな。



「………」
「………」


かっちゃん半笑い。


「………」
「………」


ウチは苦笑い。


しばらく無言のやりとりを続けたあと、どっこいしょ…てベッドのそばの床に腰を下ろす。

買ってきたばっかりのココアを口にした。

冷めてしもたらしく、生ぬるい温度が唇に触れる。


「…さっきの子、新しい彼女?」

「………彼女かも、しれんなぁ…」


かっちゃんは阿呆みたいに目を泳がせとって。

さすがのプレイボーイも彼女と入れ替わりの突然訪問に動揺を隠せへんらしい。

その様子がおもろくて、つい吹き出しそうになる。


「…なんなん、かっちゃんあんな可愛らしい子にも手ェ出しとん」

「あ〜……出したかもしれへんなぁ…」


かも…てなんやねん。

っていうかまず、シャツのボタンとめろやかっちゃん。

女のウチより色気があるってどういうことや。

身体のどこからともなく垂れ流されているかっちゃんのそういうオーラに、ダボダボジャージの自分を照らし合わせてなんか虚しくなってくる。


へー。かっちゃん、ああいう清純派も好きなんですね〜。


「ああ…アカンわ……こんなんに引っ掛かったら…」

「…ゆう、なんか文句あるんか?」


文句?文句なんかありまくりやわ。

だいたい一昨日まで連れ込んでたあのギャルっぽい美人な子はどうしたん。


深くため息をついて、残りのココアを一気に流し込んだ。