昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


地元の空気がそうするんやろか、頭の中を回るんは昔の記憶ばっかで。


ゼイゼイ息を切らして、やっと玄関の前に辿り着く。

深夜やとか、時間も気にせずチャイムを対戦ゲームのコントローラー使用時みたいに連打した。


ピンポンピンポンピンポピンポピポピポピポピポピポピポ


ドアを挟んで向こうの、玄関に明かりが灯る。

ガチャッてカギが外れる音がして、開いた隙間。


「ばあちゃ───、ひぃっ!?」


チェーンロックの向こう。


そこからヌッと出てきたのは、顔面真っ白の女やった。


…え、え?ホラー!?ホラー映画?

亡霊?ばあちゃんの死霊!?嘘やんちょっと待ってたしかにずっと下宿先から戻らんとか親不孝ハバ不孝な子やったかもしらんけどウチまだ祟られるのはちょっと、まだホラ、若いしやり残したこととかたくさん───!!


全身硬直させて顔ひきつらせてるウチの耳に、


「……え、優子やん」


ずいぶんと慣れ親しんだ、声が聞こえた。


「………は、」

「も〜何なんこんな真夜中に…ビックリするわアンタの常識の無さ」

「は……え?お母さん…?」

「何よ。まあ入りんか」


そう言って目の前にひっかかっとるチェーンがはずされる。

一歩踏み込んだら、めっちゃ懐かしい匂いが鼻腔をついた。実家独特の、なんや落ち着く匂い。


「…なんで顔白いん…」

「は?パックやん。」

「………」

「豆乳エキス入ってんで。イソフラボン」


…いや、イソフラボンはどうでもよくて。なんでそんな余裕綽々…


「もー…こんな時間に起こされて肌荒れたらどうしてくれるん。土日でええゆうたやん」


せやかて心配でいてもたってもおられんかったんや───、


て、そうや。ばあちゃん!!


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