「うん?何もないけど」
あとは食べて寝るだけやし。
風間はちょっとためらうように下を向いたあと、ウチの顔をじっと見て口を開いた。
「あんな。……家、行ってええか?いやあの、土産あんねんか、渡そうおもて──」
「え、うん。ええよ」
「は!?」
まるでウチが「カマキリって哺乳類やっけ?」とか信じられんこと言ったみたいな反応が返ってくる。
…は!?って何やねん。風間、ちょっと今日おかしいで。
風間はまたおっきいため息を吐いて、その場に座り込んだ。
「…あんな。」
「うん?」
「わかっとると思うけど…俺は、お前のことが好きな男や」
「…あ、忘れとった」
「〜忘れとったぁ!?」
…あ、風間がまたちっちゃくしぼんでる。
そんなため息吐きすぎたら不幸になるで、風間。
風間は下からウチを見上げて、眉根を寄せた。ちょっと怒っとる。
「…そういう男を簡単に家に上げたアカンねん!!うん、ええよ、とか簡単に言うな優子のアホ…!!」
「へ…ハイ、すんません。いやでも風間が家行ってええ?とか聞くから…」
「ぅ…あ〜……、あーごめんもう俺ワケわからん…」
顔を手で覆って縮こまる風間。
暗闇でもわかるのは、そっからはみ出た耳が赤いこと。
風間の明るい髪がコンビニの白い灯りにキラキラ光って、いっそう輝きを増す。
「あ〜…お土産ってなんの?」
気まずい沈黙をなんとかしようと思て、とりあえず口を割ってみた。
風間のふたつの目玉が、こっちを向いた。
「ああ、……って…うん、はぁ……」
「?」
「…ゴメン、見え見えやんな。土産とか、口実やし。……優子に会いたかっただけですすいませんホンマ」
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