じゃあ…じゃあウチは、さくらちゃんがおるんやったらウチは、もうかっちゃんにとって必要じゃなくなるってこと?
気持ちがぐちゃぐちゃんなる。黒い、汚いのばっか沸いてきて。
ウチ、最悪やな。さくらちゃんは…なんも悪ないやん。
窓の外から、視線を正面に戻す。
かっちゃんの黒い瞳は、オレンジが混じっても相変わらず黒いままやった。
「…じゃあ帰り別々んしよか!バスの方向ちゃうやろし、ウチも寄りたいとこあったし!」
心の中はグッチャグッチャのドッロドロやのに、笑顔を作った自分にびっくりした。
すごいなウチ。オスカー並やわ。アカデミー賞やわ。レッドカーペットの上歩けるわ。
かっちゃんは、顔色も声色も少しも変えんと、「うんそうやな」って言った。
夕方、それを通り越して、夜の匂いが濃くなる。
観覧車はいつの間にかてっぺんをとっくに越えていて、地上に近づいていっとるトコやった。
.



