落ち着いてやっとうどんを食べ始められたと思ったら、風間はもう最後のデザートのチーズケーキに到達しとった。
…風間の胃袋ってほんまどうなっとるんか見てみたい。
呆れたように見てたら、あーんと大きく口を開けた風間と、目が合った。
「ん?欲しいん?」
「……じゃあもらうわ」
とても一口サイズじゃない一切れを、風間がウチの唇にずいっと近づけてくる。
野球ボールをくわえる勢いで大きく口を開けると、入場してくるチーズケーキ。
「…あ、うまいわコレ」
「やろ?俺食堂のデザートゆうたらいっつもコレやもん」
風間は満足げににっこりと笑いながら、自分の口にもチーズケーキを運んだ。
ほんまに、食堂のやと見くびってたのに全然おいしい。…けど、うどんにもケーキはやっぱり合わへんわ。
時計の針はちょうど12:30を指していた。
そろそろ、かっちゃんも学校に来てる頃かもしらん。
かっちゃんは学部が違うから、同じ大学でもめったに会わへん。
その方がええねんけど。アパートも一緒やのに、何が悲しくて大学でも顔合わせなあかんねん。
かっちゃんに早く次の彼女ができればええ。
ゆうて何日か後にはポッとできとると思うけど。
できればいいと思うのに、なんか胃の辺りがムカムカするんは何でなんやろ。
…初めっからこんなんやった訳じゃない。
初めのうちは、かっちゃんのおばちゃんの望みのとおり、たまには健康的な料理作ったったりするくらいやったし。
かっちゃんほっとったらカップラーメンしかせぇへんから。
だってそもそも、ウチらは健全ないとこ同士やったはず。
それがひっくり返ってしもたんは、あの、思い出したくもない冬の日や。



